バーにて二人の男が向かいあっていた。
一人はミラーシェードをかけている。
もう一人は巨漢。
背は高く体は鍛えてると一見してわかるほど分厚い。
第一印象は山を思わせる男だ。
「ターゲットはこの男だ」
ミラーシェードをかけた男が巨漢に向かって写真を滑らせる。
写真には赤い髪の毛が印象的な男が写っていた。
「名は、マキシマム・揚。夏王朝の禁軍武術師範だ」
「相手にとって不足はない」
巨漢が答えた。
「だが俺には暗殺はできん」
「いや、これはあんたにしかできない仕事だ」
ミラーシェードの男が口元を皮肉げに歪ませた。
「チャイニーズは、執念深い。
奴らの身内が殺されたなら墓を掘り返してでも復讐する。
それが奴らの伝統という奴だ。
だがこの場合、伝統が仇となる。
特に禁軍武術師範ともなれば武術界の伝統を背負ってると言ってもいい」
ミラーシェードの男が手元に置いてあったグラスをつかみ一気に空にする。
「だからこれはあんたにしかできない仕事だ。“88”」
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